6月8日(火)19:30〜21:30に行われた、
『オープンダイアローグについて学ぶ〜受けたいときに受けられる場をつくろう〜』の第4回の勉強会について、感想を書きたいと思います。
この日は他に用事があり、
後で録画を視聴した際の感想になります。
サブタイトルは、
「当事者研究とオープンダイアローグ」
で、
講師の方は、
京都府立大学文学部准教授で、
ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)を診断されたご自身について、
文芸作品を創作するように書かれた、
『みんな水の中』(未読)という本を出されている、
横道誠さんです。
今回取り上げられている当事者研究については、
僕も興味があり、
これまでに色々な本を読んだり、
イベントに参加したり、
実際に当事者研究を行なっているグループにも参加してきました。
そのため、
当事者研究についての概要は知っていましたが、
まずは定義について、
改めて調べてみました。
けれど、
「当事者研究(とうじしゃけんきゅう)は、北海道浦河町にあるべてるの家と浦河赤十字病院精神科ではじまった、主に精神障害当事者やその家族を対象としたアセスメントとリハビリテーションのプログラムであり、その構造はSST、認知行動療法、心理教育、ストレス脆弱性モデル、ストレングスモデル、ナラティブアプローチ、スキゾフレニクスアノニマスなどを基礎としていると批評されている。一方で、その主体はあくまで「当事者」であり、「研究」に軸があるため、専門家や医療者による支援アプローチとは一線を画しているともされている。」(Wikipedia)
という形でWikipediaに書いてあり、
一言で分かりやすい形では書いてありませんでした。
横道さんの講義でも、
【「当事者研究では、当事者がかかえる固有の生きづらさ——見極めや対処が難しいさまざまな圧迫感(幻覚や妄想を含む)、不快なできごとや感覚(臭いや味、まわりの発する音や声など)、その他の身体の不調や症状、薬との付き合い方などの他、家族・仲間・職場における人間関係にかかわる苦労、日常生活とかかわりの深い制度やサービスの活用レベルまで、そこから生じるジレンマや葛藤を、自分の”大切な苦労”と捉えるところに特徴がある。そして、その中から生きやすさに向けた「研究テーマ」を見出し、その出来事や経験の背景にある前向きな意味や可能性、パターン等を見極め、仲間や関係者の経験も取り入れながら、自分らしいユニークな発想で、その人に合った“自助——自分の助け方”や理解を創造していくプロセスを重んじる」
向谷地生良(2020)「当事者研究とは——当事者研究の理念と構成」 、当事者研究ネットワーク(https://toukennet.jp/?page_id=56 2020年6月11日公開)】
という文章を引用して紹介しており、
短く、一言で書いてある定義が見つからないため、
ここではシンプルに、
「当事者が自分自身について研究すること」
、
という形で理解したいと思います。
まず、
横道さんたちが行っているオンラインのオープンダイアローグ研究会とオープンダイアローグ との違いについて、
主に、
オープンダイアローグ の7つの原則を用いて、
説明されていました。
①即時対応
②社会的ネットワークの重視
③柔軟性と機動性
④チームとして責任を持つ
⑤心理的連続性
⑥不確実性に耐える
⑦対話主義
この中で⑥⑦については、
横道さんの行っている研究会では共通している、
ということでした。
①の即時対応については、
ボランティアでやっているため難しく、
②社会的ネットワークの重視については、
本来はクライアントの家族や友人などを巻き込んでいくが、そこまでできてきいないこと、
③柔軟性と機動性、
④チームとして責任を持つ、
については本格的に行っているオープンダイアローグ に比べれば少し甘く、
⑤心理的連続性についても、
イチゲンさん、つまり、
一回だけ参加する人の存在や、
もし参加しても他にも参加者がいるので順番が回ってこないなどの理由で、
横道さんのグループでは難しくなってしまうということでした。
次に、
当事者研究とオープンダイアローグの比較について。
オープンダイアローグ、
当事者研究ともに、
「専門家と当事者が対等」、
「ポリフォニー」(多声性)
という点が共通しており、
当事者研究研究においては、
「仲間」を重視している点が異なるということでした。
この、
「仲間」を重視する、
という点については、
個人的に心を揺さぶるものを感じました。
そして、
ナラティヴセラピーのような、
クライアントが一方的に新しい物語を歩むように導かれることと比較して、
「オープンダイアローグと当事者研究は、
共同体を巻きこむ仕方で
当事者が新しい物語を生きなおすことを促進する」点を強調されていました。
僕も、
一方的な関係でなく、
対等な関係を目指しているので、
この部分も心に響きました。
でも、
この講座の中で1番心に響いて感銘を受けたのは、
「自助グループの理論では、
専門家の語る専門的な知識だけが知識ではなく、
当事者が語る体験的な知識は、
(専門家の語る)専門的な知識に匹敵するほどの重みがあるということが言われている」
、と、
おっしゃり、
横道さんはその考えを支持されている、
と話されていたことです。
特に、
上のような自助グループの考えを批判する専門家の方々に対して、
「それは間違っていると思います」
というような表現で主張されていたことに、
力強さを感じました。
僕には、
視力矯正の不具合で悩んでいる当事者と専門家や、専門家を志している方とが、
主にゆっくりと丁寧な対話を行いながら視力矯正の不具合を改善していく活動や研究を当事者研究のような形で行いたいという想いがあります。
その発想の根底には、
「医師と患者という関係性や、
障害者、健常者という分け方を前提とせず、
何かしら生じた個人の「不具合」に対して病名や障害名をつけることなく、
不具合を抱えた当事者はその不具合を抱えた経験や感性を活かして、
医師などの医療の専門家は専門的な技術や知識を活かして、
お互いが対等の立場で、
共に、
その「不具合」を改善していくという問題解決のあり方=新しい医療の形はないのだろうか。」
という問題意識があります。
その問題意識は、
自助グループの理論として紹介されていた、
「当事者が語る体験的な知識は、
(専門家の語る)専門的な知識に匹敵するほどの重みがある」
という発想と通ずると思っています。
そのため、
オープンダイアローグ や当事者研究の思想や実践が広がっていき、
様々な専門家の方々とも
お互いを尊重し合える関係を築き、
対話が行えるような社会になっていけばと願っています。
......
プライバシーに関わるので記事には書けないのですが、
講座の中で行われた当事者研究のデモンストレーションも、
とても興味深い内容のテーマについて話されていました。
そして、
この日はリアルタイムで参加できなかったので当事者研究の実践にも参加できなかったのですが、
この講座を録画で視聴しながら、
無性に当事者研究がやりたくなってきました!
皆さんには、
主にご自身の困りごとで、
研究してみたいテーマはありますか?
また、
「当事者が語る体験的な知識は、
(専門家の語る)専門的な知識に匹敵するほどの重みがある」
という考えについて、
どう思われますでしょうか?
今回は以上です。
最後までお読み下さり、
ありがとうございました。